前回のシオノギファーマ NewsLetterでは、「抗がん薬曝露調査の必要性について」を紹介いたしました。今回は、シオノギファーマが取り組む「抗がん薬曝露調査」について紹介いたします。
シオノギファーマの抗がん薬曝露調査
1)抗がん薬曝露調査の実績
シオノギファーマ株式会社の抗がん薬曝露調査は先生方からのお声から始まりました。医薬品の分析技術を活かして医療現場に何か貢献できないか、シールを貼って剥がすだけで安全かつ簡便にチェックできないか、そして実用性があるのか検討を重ね、サンプリングシート法(特許取得)を開発し、前身のシオノギ分析センター株式会社時代の2011年9月から本格稼働しました。サンプリングシート法を用いるメリットとして、シートを目的部位に一定期間貼付することで従来からの累積量でなく、調査期間中に曝露した量が測定可能です。また、シートに付着した抗がん薬を定量測定するため、拭き取り部位による回収率への影響がないという利点があります。
これまでに、がん拠点病院138施設でご活用いただいており、測定対象となる薬剤の例を表1に記載します。
表1 測定薬剤
サンプリング方法 | 分析法 | 対応薬剤* |
サンプリングシート法 | LC-MS/MS法 | CPA・5-FU・PTX・GEM |
尿・唾液 | LC-MS/MS法 | CPA |
*ワイプ(拭き取り)法、抽出法につきましては、別途お問い合わせください。
2)シオノギファーマが提供する対策ツール
2011年米国がん看護学会では“Safe Handing of Hazardous Drugs”の第2版が公表され、欧米諸国では安全対策が徹底されています。日本においても、2018年公益社団法人日本看護協会から出版された看護職の健康と安全に配慮した労働安全衛生ガイドラインに記載されているように、近年の労働安全衛生に対する意識の高まりから、医療従事者の健康を維持し、安心して働ける環境を作るため、確実性のある曝露防止策の実施が望まれています。現状の取り扱い環境の見える化を行うことで次の①~⑦の対策を進めるためのツールとしてご活用いただいております。
① 汚染原因の究明
② 対策の立案
③ 対策効果の評価
④ 手技・手順の最適化
⑤ 作業者への教育資料作成
⑥ 作業者の曝露対策への意識向上
⑦ 定期モニタリングによる継続的な管理(図1)
図1 定期モニタリングによる継続的な管理
~ 定期モニタリングによって不安から安心へ ~
3)汚染の傾向について
抗がん薬の汚染状況は医療用閉鎖系器具の使用の有無や清掃状況により大きな差が生じます。2013年から2019年にかけて累積した測定結果から、外来化学療法室及び病棟の汚染傾向として、看護師の手袋の汚染量が最も多く、次にトイレの汚染量の順に多くなることが分かり、患者尿の飛び跳ねが汚染源になっていることが判明しました。
4)まとめ
抗がん薬の曝露調査を行うことで汚染状況を確認することができ、必要な場所に適切な曝露対策を実施することが可能になります。実際、これにより職場環境における汚染の低減につながると共に、定期的なモニタリングを行うことで曝露対策の有用性を評価し、汚染の低減が維持されていることが管理できるようになったと先生方からお声をいただいています。
また、汚染傾向に示されるように外来化学療法室やトイレなど、医療用閉鎖系器具だけでは対策が難しいことも明らかになっていますが、そういった場所に対しては抗がん薬の分解液などを用いることで、曝露された汚染物質を除去することも可能です。
抗がん薬の取り扱い場所におけるモニタリングを通じ、シオノギファーマは今後も引き続き医療関係者の皆様が、安心して医療行為に従事できる環境づくりをサポートさせていただきます。