シオノギファーマは、ラベル台紙の資源循環型水平リサイクルの実現を目指す「資源循環プロジェクト」に参画しました。製造工程にて廃棄されるラベル台紙の回収・リサイクルを通じて、サーキュラーエコノミーへの移行を推進し、さらなるサステナブルな社会の実現に貢献します。今回は、第2弾として、医薬品用ラベルへの適用に向けた実証実験の成果について紹介します。資源循環プロジェクトの概要については、ラベル台紙の水平リサイクル、「資源循環プロジェクト」への参画(1)~ラベルを使う、だからこそ。~をご覧ください。
アンプル用ラベルへの適用を目指して実証実験をスタート
2022年1月より、資源循環プロジェクトのリサイクル可能なラベル台紙(以下、リサイクル専用台紙)を、注射製剤のガラス容器であるアンプル用の表示ラベルに対して、切替・適用するための実証実験を開始しました。シオノギファーマ・摂津工場で製造する一部製品に対して、2022年度中の切替を目指し、実際の生産設備を用いた適性確認(以下、ラインテスト)を始めとした各種品質評価を進めてきました。
そして2023年3月より、アンプル注射剤用のラベルに商用生産として初めて適用し、使用済みリサイクル専用台紙の回収を開始しています。
表示ラベルの全ての要素を環境配慮仕様へ
今回適用した表示ラベルは、ラベル台紙をリサイクル専用台紙に変更することに加えて、ラベル自体も環境配慮仕様となる設計に変更しています。
表示ラベルは、表面基材、粘着剤、印刷インキ、ラベル台紙から構成されます。表面基材には、リサイクル専用台紙と同様に、ペットボトル再生原料を25%以上使用したフィルムを採用しています。これらのフィルムは、空洞化構造により、一般的なPETフィルムと比べて約30%軽量化されており、また、従来のラベル及びラベル台紙と比較して、約25%の薄肉化を実現しています。これにより、ロール状に巻き取られたラベル1巻の質量・体積を変えることなく、1巻当たりのラベル枚数を増やすことが可能になります。1巻当たりのラベル枚数が増えることで、製造設備におけるラベルの取り換え回数の低減に繋がり、工場の生産性向上が期待されます。
さらに、粘着剤や印刷インキには、バイオマス原材料を10%以上使用した材料を採用しています。回収・リサイクルが難しくワンウェイプラスチックとなるラベル自体には、“Renewable(リニューアブル)”な方法で環境課題に対応しています。
表示ラベルの環境配慮仕様
これらの環境配慮仕様により、シオノギファーマでのLCA*1ケーススタディにおいて、ラベル及びラベル台紙の製品ライフサイクル全体におけるCO2排出量は、現行品と比較して約16~18%削減*2できることが分かりました。脱炭素に向けた取り組みが求められる中、本取り組みは、CO2の排出に対して経済的な負担を求めるカーボンプライシングの観点からも、コスト効率を高められる技術開発に位置付けられます。
*1 Life Cycle Assessment
*2 サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドラインVer.3.2(環境省、経済産業省)に準じて,製品LCA値をシオノギファーマの算定根拠・前提にて比較.なお,低割合の添加剤,表面コート剤,粘着剤,印刷インキの製品LCA,粘着剤塗布工程~印刷工程~納品ラベル貼り付け工程で発生するCO2排出量は,結果に大きく影響しないため算出除外(カットオフ)とした.
出典】 社団法人プラスチック処理促進協会,“石油化学製品のLCIデータ調査報告書<更新版>”(2009),経済産業省 経済産業政策局 調査統計部,“平成12年石油等消費構造統計”, 経済産業省 経済産業政策局 調査統計部,“平成12年工業統計表”株式会社岩波書店,“理化学辞典”(1983),経済産業省,“平成12年プラスチック製品統計年報”全国クラフト紙袋工業組合,“クラフト紙袋部門別出荷実績”(2002),環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部:“産業廃棄物排出・処理状況調査報告書/平成12年度実績”(2003),独立行政法人国立環境研究所 地球環境研究センター,”産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)”(2002),日本PETフィルム工業会,”ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのLCI分析報告書”(2011),温室効果ガスインベントリオフィス,”日本国温室効果ガスインベントリ報告書”(2009),資源エネルギー庁,”荷主のための省エネ法ガイドブック, 省エネルギーセンター”(2006),環境省・経済産業省,”算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧”(2009)
リサイクル専用台紙を用いたラベルの設備適格性を検証
紙製のラベル台紙から、PET製フィルムへと材質が変わることに伴い、伸びや滑りなどの物性・表面特性に加えて、透過型センサ類の光透過率が異なってくるため、実際の生産設備を用いたラインテストが必要になります。ラベラーと呼ばれるラベルを自動で貼る機械を用いて、アンプルに高速で貼り付けられるか、貼り付けられたラベルにシワや浮きがないか、安定稼働に問題がないかなど、医薬品に求められる高い品質レベルを実現できるかという点を重視して検証しました。
試作したリサイクル専用台紙は、実証化後の水平リサイクルを想定し、ペットボトル再生原料に加えて、フィルム製造時に発生する廃材を一部原料に使用しています。さまざまなサイズのアンプルを用いてラインテストを重ねた結果、センサ類の調整を行うことで、現行ラベルと同様に、ラベルの繰り出し・アンプルへの貼り付けを問題なく行えることが確認できました。
実証実験においてラベルが貼られたアンプル
環境配慮型ラベルの品質評価
実証実験で試作したラベル(以下、変更ラベル)は、表面基材、粘着剤、印刷インキが環境配慮設計に変更されるため、耐摩擦性や耐光性、接着性など、ラベルに求められる基本特性について検証する必要があります。シオノギファーマにて評価した結果、全ての検証項目において、アンプル用ラベルとしての要求品質を満たしていることが確認できました。
さらに、全体的な印刷品質やレーザーによる使用期限等の捺印品質は、現行ラベルよりも向上し、ラベルの表示内容がくっきりと見やすくなりました。また、これにより、ラベルに印刷されたバーコードの読み取り性(バーコードグレード)も向上しています。 特に、医薬品においては、ラベルの読み間違いによる薬の取り違えなどのメディケーションエラー防止の観点から、視認性・識別性が非常に重要です。これらの結果は、医療現場における使用性・機能性の向上にも繋がる改善だと捉えています。
印刷品質の向上によりラベルの表示内容が見やすくなる
バーコード(GS1データバー)の印刷品質向上
社内の回収スキームについては、プロジェクト専用回収ボックスを仮設するなど、具体的な手順について確認しました。また、一連の実証実験で発生する使用済みのリサイクル専用台紙を提供することで、資源循環プロジェクトのモデル構築・実績化に協力しました。
工場に設置したリサイクル専用台紙の回収ボックス
資源循環プロジェクトでは、2024年度中に、ペットボトルと使用済みリサイクル専用台紙の再生原料を併せて使用する資源循環型水平リサイクルの実現を目指しており、地球環境の保全を願うさまざまな企業とともに動き出しています。
シオノギファーマは、お客様から信頼される 「技術開発型ものづくり企業(CDMO*3)」 となることをミッションとして掲げ、2019年4月1日より事業を開始しました。原薬の製造法開発および製剤処方開発から商用生産に加え、分析法開発や医薬エンジニアリング技術による設備設計サポートなどを含めた 「フルレンジサービス」 をワンストップでご提供できる体制を整えております。お客様のご要望に応じた受託サービスやソリューションサービスの提供を行っていますので、お気軽にご相談ください。
*3 CDMO:Contract Development and Manufacturing Organization