シオノギファーマ株式会社 (以下、シオノギファーマ) は、新規ビーズミル設備にシオノギファーマ独自の粉砕技術を融合することにより、業界トップレベルの金属コンタミネーション抑制に成功しました。本技術の活用により、金属コンタミネーションを最小限でコントロールしつつ、難溶解性薬物をナノ粉砕し、その溶解性および吸収性を改善することが可能となりました。
ビーズミル法と金属コンタミネーション問題
ビーズミルとは、粉砕媒体であるビーズを粉砕室内で攪拌させ、生じるビーズ間の衝突力を利用して薬物を微細化する機器です。その粉砕機構から,ビーズ同士およびビーズと装置の接触は避けられないため、粉砕効率とコンタミネーションの間にはトレードオフの関係があります。医薬品に金属コンタミネーションが発生した場合、製品汚染や人体影響のリスクがあるため、ICH※1によって金属コンタミネーションを規制するガイドライン※2が策定され、適切な管理が求められています。
※1 ICH:International Council for Harmonization of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)
※2 ICH-Q3D「医薬品の元素不純物ガイドライン」
新規ビーズミル設備の特徴
本設備は、広島メタル&マシナリー株式会社※3と塩野義製薬株式会社との共同研究により開発された新規ビーズミル設備です。ビーズミルには、高い処理速度、低金属コンタミネーション、洗浄の容易性の3点が求められます。本設備は縦型ミルであり、低速運転を行ってもミル下部にビーズが高密度で存在し、粉砕効率が低下しません。また、低速運転であるため衝突エネルギーが低下し、ビーズ摩耗が抑制され、金属コンタミネーションを低減することができます。加えて、本設備はメカニカルシールレス機構【特許申請中】であり、ミルの洗浄が容易なだけでなく、メカニカルシール由来の金属コンタミネーションがありません。
※3 広島メタル&マシナリー株式会社HP:http://www.hiroshimamm-chemtech.com/
金属コンタミネーションを抑制できる粉砕技術
既存のビーズミルによるナノ粉砕技術では、一般に、金属コンタミネーション量を原薬当たり10 ppm※4以下で管理していると報告されています。一方、シオノギファーマでは独自のナノ特許技術【特許出願済み】と上記の新規ビーズミル設備を融合し、処方と製法を最適化することで、金属コンタミネーションを原薬当たり1.6 ppmまで抑制することに成功しました。また、既存技術を上回る粉砕効率を実現しており、生産性の向上が期待されます。
※4 先行ナノ粉砕技術の関連特許:US6,582,285 B2、
シオノギファーマ 尼崎事業所では、GMP対応の同型ビーズミルを保有しており、少量 (最低仕込み量720mL、最大仕込み量2L) でのテスト検討、治験薬から商用生産まで、幅広いGMP受託製造を承っております。薬物粉砕時の金属コンタミネーションでお困りのお客様、当社の新規ナノ粉砕技術をぜひご活用ください。
シオノギファーマでは微量金属の分析技術としてICH Q3D 「医薬品の元素不純物ガイドライン」に対応する、高感度かつ特異性に優れたICP発光分光分析法(ICP-AES)やICP質量分析法(ICP-MS)を用いた元素不純物分析も受託しております。ナノ粉砕技術と併せて是非ご相談ください。
・「元素不純物の高感度分析技術のご紹介」:https://www.shionogi-ph.co.jp/information/news_letter/2020/10/20201027.html
さらにシオノギファーマでは難溶性薬物のもう一つのソリューションとしてスプレードライ技術のご提案も可能です。こちらをご参照ください。
・「スプレードライ技術のご紹介」:https://www.shionogi-ph.co.jp/information/news_letter/2020/08/20200804.html
シオノギファーマは、お客様から信頼される 「技術開発型モノづくり企業(CDMO※8)」 となることをミッションとして掲げ、2019年4月1日より事業を開始しました。原薬の製造法開発および製剤処方開発から商用生産に加え、分析法開発や医薬エンジニアリング技術による設備設計サポートなどを含めた 「フルレンジサービス」 をワンストップでご提供できる体制を整えております。
※8 CDMO:Contract Development Manufacturing Organization