今回は、シオノギファーマ株式会社(以下、シオノギファーマ)が保有する、注射剤などの凍結乾燥製剤において、製品の品質を向上し、かつ乾燥時間を短縮させる画期的な新規技術を紹介いたします。これは、凍結乾燥のプロセスで溶液を凍結させる際の氷晶核の形成を制御する技術で、「アイスフォグ法」といいます。
凍結乾燥製剤は、医薬品が溶液状態で不安定な場合など、主に無菌製剤の製剤設計において使用されており、モダリティによらず適用可能であるため、広く一般的に使われています。
凍結乾燥の工程は主に、溶液を凍結させ氷晶を形成する凍結工程、昇華乾燥を行う一次乾燥工程、蒸発により結合水を除去する二次乾燥工程で構成されます。なかでも凍結工程は、のちの一次乾燥の昇華による乾燥状態に影響を与え、製剤品質を左右する重要な工程です。
従来の凍結工程は、過冷却状態から溶液が成り行きで凍結します。この時、凍結乾燥庫内に配置された製品間で凍結のタイミングが異なるため、氷晶の大きさにばらつきが生じ、製品の品質(例えば、外観や色調など)にも影響を与えます。さらには、凍結時の課題として、凍乾庫内の位置により過冷却が深くなっているバイアルほど急速に凍結が進むため、形成される氷晶が小さくなり、一次乾燥工程の昇華抵抗が大きく、乾燥時間が長くなってしまいます。
これらを解決するため、アイスフォグ法は、過冷却状態にある溶液中に、アイスフォグ (蒸気を液体窒素で冷却し霧状にしたもの) を導入し、氷晶核の形成を凍乾庫内で一斉に誘発することで、凍結のタイミングを制御します。過冷却が浅い状態で一斉に凍結させることで、氷晶サイズを均一かつ大きくすることが可能となり、製品品質の向上と乾燥時間の短縮に寄与することが期待できます*1(図1参照照)。
*1 川崎 英典,“凍結乾燥プロセスの設計”,製剤機械技術学会誌,Vol.24 No.2,p39-p51,2015
アイスフォグ法を適用した場合の凍結の様子は以下の動画をご覧ください。
シオノギファーマでは、塩野義製薬との共同研究によりアイスフォグ法をはじめとする凍結乾燥プロセスの改善研究を進め、医薬品への適用に向けて各種検討を行っております。お客さまのご要望に沿った提案をさせていただきますので、ぜひご相談ください。
シオノギファーマは、お客さまから信頼される 「技術開発型モノづくり企業(CDMO*2)」 となることをミッションとして掲げ、2019年4月1日より事業を開始しました。原薬の製造法開発および製剤処方開発から商用生産に加え、分析法開発や医薬エンジニアリング技術による設備設計サポートなどを含めた 「フルレンジサービス」 をワンストップでご提供できる体制を整えております。お客さまのご要望に応じた受託サービスやソリューションサービスの提供を行っていますのでお気軽にご相談ください。
*2 CDMO:Contract Development Manufacturing Organization