シオノギファーマ株式会社
ナガセ医薬品株式会社(現 シオノギファーマ 伊丹工場:以下、「伊丹工場」)は2020年10月1日にシオノギファーマ株式会社(以下、シオノギファーマ)の傘下に入り、新たなスタートを切りました。今回は、シオノギファーマが所有するDDS*1注射剤の開発・製造技術の一端を紹介させていただきます。是非、「高薬理活性注射剤の製造設備について」と併せてご覧ください。
*1 DDS:Drug Delivery System
DDSとは、体内での薬物分布を制御することで、薬物の効果を最大限に高め、副作用を最小限に抑えることを目的とした技術であり、患者のQOL*2を向上させることができます。また、低分子医薬品のDrug Repositioning*3や中・高分子医薬品(バイオ医薬品、核酸医薬品、ペプチド医薬品等)のキャリアとしてもDDS技術が注目を浴び、創薬の重要なツールの1つとなっています。昨今では、ナノテクノロジーを活用したDDS技術「ナノDDS」の技術革新が進み、現在、多くのナノDDS技術を用いた新薬が開発されています。
*2 QOL:Quality of Life
*3 Drug Repositioning:既存のある疾患に有効な治療薬から、別の疾患に有効な薬効を見つけ出すこと
伊丹工場(当時、ナガセ医薬品)では、2004年に初めてナノDDS技術を活用した高薬理活性注射剤の治験薬製造受託を開始し、現在までにリポソーム*4医薬品、LNP*5医薬品、高分子ミセル医薬品等10品目以上のDDS注射剤の製造実績を積んでまいりました。また、DDS注射剤の自社開発を通じて獲得した豊富な製剤開発・分析法開発等のノウハウ、規制当局の相談業務の利用により培ったDDS製剤に関する国内レギュレーションへの対応力、積極的な各種DDS製造設備や技術導入により、お客様のニーズにあった提案型の開発・製造受託が可能です。
*4 リポソーム:細胞を取り囲む細胞膜の主要構成成分である、脂質を用いたカプセル(=リポソーム)に薬剤を封入した製剤のこと。カプセルの大きさはナノメートル単位と非常に小さく、カプセル化することで、薬剤を体内の必要な箇所に選択的に届けることができる。さらに放出量をコントロールすることによる副作用の低減や、持続性のコントロールが可能となる。
*5 LNP:Lipid Nano Particle(脂質ナノ粒子)
伊丹工場では、複数のDDS注射剤の製造設備をラボ及び高薬理活性注射棟に導入しており、製剤設計からGMP対応の治験薬製造、商用製造まで幅広く対応することができます。近年では、最新のマイクロ流路デバイスの導入を進めており、当該技術を活用した開発・製造受託を積極的に取り組んでいます。また、高薬理活性注射棟には、DDS注射剤製造用の液調製エリアや製造設備の保管エリアを有し、委託元からDDS製造設備を持ち込んで受託製造を行うことも可能です。
高薬理活性注射棟の設備概要につきましては、「高薬理活性注射剤の製造設備について」をご参照下さい。
伊丹工場では、DDS製剤特有の特性解析のための試験機器も所有しており、製造中の工程試験や製品試験も対応可能です。
*6 平成28年3月28日 薬生審査発0328第19号『リポソーム製剤の開発に関するガイドライン」について』における「製剤の特性解析」より引用
シオノギファーマは、お客様から信頼される「技術開発型ものづくり企業(CDMO*7)」となることをミッションとして掲げ、2019年4月1日より事業を開始しました。原薬の製造法開発および製剤処方開発から商用生産に加え、分析法開発や医薬エンジニアリング技術による設備設計サポートなどを含めた「フルレンジサービス」をワンストップでご提供できる体制を整えております。
*7 CDMO:Contract Development Manufacturing Organization