DDS技術「PLGAナノ粒子」の紹介(2)

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シオノギファーマ株式会社

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シオノギファーマ株式会社(以下、シオノギファーマ)は、粉体技術の世界トップ企業であるホソカワミクロン株式会社*1(以下、ホソカワミクロン)および専門商社である株式会社野村事務所と、2020年6月1日に「PLGAナノ粒子を用いた医薬品の製剤開発から治験薬/商用製造(無菌、非無菌対応)」に関する総合的アライアンスについて合意しました(2020年6月12日 プレスリリース*2)。
ホソカワミクロンにてお客様の薬物ないしは候補物質のPLGAナノ粒子化を受託研究した後、シオノギファーマでGMP*3に準拠した医薬品(治験薬/商用品)を製造するという一連の開発支援業務を開始しています。
前回の記事*4ではPLGAナノ粒子の概要について紹介させて頂きました。こちらの記事では、PLGAナノ粒子の研究実績や用途について紹介いたします。

・DDS:Drug Delivery System(薬物送達システム)
・PLGA:Poly Lactic-co-Glycolic Acid(ポリ乳酸・グリコール酸共重合体)

*1 ホソカワミクロン株式会社 マテリアル事業本部 Webサイト(外部サイト)
*2 【2020年6月12日 プレスリリース】
PLGAナノ粒子を用いた医薬品の製剤開発から治験薬/商用製造に係る協業について
*3 GMP:Good Manufacturing Practice(医薬品等の製造品質管理基準)
*4【お役立ち情報】DDS技術「PLGAナノ粒子」の紹介(1)は こちらからご覧ください

PLGAナノ粒子の研究実績と用途例

PLGAナノ粒子は投与ルートとその投与形態によって特異的なナノDDS機能を発揮しています。研究実績を表1、用途例を図1に示します。またいくつかの研究実績を紹介します。

図1 PLGAナノ粒子の用途例(ホソカワミクロン社からご提供)

【研究実績の一例のご紹介①】『難治性潰瘍性大腸炎に対する飲む核酸医薬の開発』

マウス病態モデルを用いて、核酸医薬 “NF-kB decoy” の経口投与での有効性を確認したところ、核酸医薬単体では生体内の胃酸や酵素などにより分解し、抗炎症作用をほとんど示さなかった。しかしながら、核酸医薬を封入したPLGAナノ粒子を投与したところ、抗炎症作用が顕著に表れ、本製剤の有効性が確認された*5。また、この基礎技術を応用した国家プロジェクト*6では患者のQOL(Quality of Life:生活の質)の改善を目指して、「核酸封入PLGAナノ粒子経口製剤」による検証がなされています。

図2 難治性潰瘍性大腸炎に対する飲む核酸医薬の開発*5

*5  J. Pharmacol Exp Ther., 299, 775-781(2001)
*6 「核酸含有PLGAナノ粒子技術を用いた経口DDS製剤の研究開発」
近畿経済産業局:地域イノベーション創出研究開発事業(2010~2011年度)

【研究実績の一例のご紹介➁】『PLGA ナノ粒子の細胞内取り込み能』

図3は、PLGA ナノ粒子の細胞内取り込み能を、6-クマリン(蛍光標識剤)封入PLGA ナノ粒子を培地に添加して培養したヒト表皮角化細胞(NHEK: Normal Human Epidermal Keratinocytes)を共焦点顕微鏡(Carl Zeiss, Goettingen, Germany)により観察評価したものです。PLGA ナノ粒子を示す蛍光は2h、24h後のいずれにおいても観察され、特に24h後では蛍光が細胞全体に観察されたことから、PLGA ナノ粒子は経時的に細胞内に取り込まれ、封入成分を目的の細胞内に送達できることが示されています*9。
これに関連し、図4はリアルタイムPCR法を用いてPLGA ナノ粒子による特定タンパク(17型コラーゲン:COL17)の発現促進効果を検証したものですが、成分単体群(ChA)と比較してPLGAナノ粒子群(ChA/PLGA NP)での遺伝子発現量が有意に増加し、最大50%となっております*7
そのほか、5分で培養ヒト冠動脈平滑筋細胞に95%以上取り込まれているデータ*8もあり、PLGAナノ粒子の細胞内デリバリーは応用性が広範囲に及んでいます。

図3 PLGA ナノ粒子の細胞内取り込み*7

図4 PLGAナノ粒子*11による17型コラーゲン遺伝子発現効果*7

*7 Journal of Drug Delivery Science and Technology, 58 (2020)
*8 Jpn. J. Interv. Cardiol, 22, (2007)
*9 COL17産生促進効果の知られるクロロゲン酸(ChA)を封入したPLGAナノ粒子(ChA/PLGA NP、平均粒子径 224nm)をNHEK細胞に添加し
   2h暴露した後、通常培地に交換し22h細胞培養。培養後、細胞から抽出したtotal RNAをテンプレートとしてリアルタイムPCRを実施(目的遺伝子:
   COL17、リファレンス遺伝子:GAPDH)

シオノギファーマは、お客様から信頼される 「技術開発型モノづくり企業(CDMO*10)」 となることをミッションとして掲げ、2019年4月1日より事業を開始しました。原薬の製造法開発および製剤処方開発から商用生産に加え、分析法開発や医薬エンジニアリング技術による設備設計サポートなどを含めた 「フルレンジサービス」 をワンストップでご提供できる体制を整えております。お客様のご要望に応じた受託サービスやソリューションサービスの提供を行っていますのでお気軽にご相談ください。

*10 CDMO:Contract Development Manufacturing Organization

【前回記事】DDS技術「PLGAナノ粒子」の紹介(1)は こちらからご覧ください

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